苦労した線描が克服できました

34年前にウイリアムモーリス工房で作られたパネルの修復をしました。

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その時に取り換えた絵付けピースです。
大きさは W75×H52(㎜)
(黄色はシルバーステイン・・・硫化銀・・・の着彩です)

大凡、150年前の絵付け師がサラッと描き上げたこのピースの線描を同じように描くのに大変な苦労をしました。

当時は修行中でもあり、同じようなグリザイユの線がなかなか引けません。何度も描き直し工夫しながら、一週間掛けて何とか描き上げ、この割れたピースと取り換えました。


作業の途中で神保町に行き、古い文献を探しました。その中に、セピアカラーのイギリスの工房での作業風景写真が掲載されたものを見つけました。

高価なもので買えませんでしたが、眼を凝らすと奥のほうで、くわえ煙草で絵付け師が仕事をしていました。直ぐに帰って、くわえ煙草の真似をして線を引いたことを思い出します。

それからというもの、この絵付け師のように楽に線を引く練習を繰り返してきましたが、そんなに簡単には引けません。

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一つのピースの中で何処かの線がぶれていると非常に不細工なものになります。

30年間いつも課題でした。大学受験に合格せず浪人生活を続けている心境と同じです。

それが、一週間ほど前にプレゼンテーションの見本として作った唐草を描いたピースをみて、いつの間にか描けていることに気がつきました。

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焼成後、棚板から取り上げると、

アレッ、克服していると思った時は、非常にうれしいものです。

神保町の写真で見た絵付け師も髭を生やした60歳前後だったような気がします。









イメージ 4自己満足に浸っていると、そんな時に限ってタイミング良く、お客様から嬉しい品を頂戴してしまいました。

ホッとする深みのある味です。
このウイズキーも30年経過していると思うと、なんとも感慨深くなります。






下の写真は、大凡17世紀のオランダのステンドグラスの一部です。
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大きさは、W180×H205(㎜)
小さな絵付けピースです。

騎士の鎧が紋章になったもので非常に手慣れた線描に赤と青のエマイユにシルバーステインが施された超絶技巧です。








これは、ウイリアムモーリスの修復をした後、日本国内でのステンドグラス絵付け職人の先駆けでいらっしゃる尾山先生から・・・・「加藤くん、これから仕事をする時には必ずこれを観て、絶対に手抜きするなよ」と・・・・手渡されました。

このような繊細なパネルを仕事で制作することはなかなかありませんが、いつも仕上げの段階で必ず観るようにしています。