修復と線描・・・William Morris パネル全体像

32年ほど前の、修復当時の写真がありました。

全体として大変気品のある豊作を祝う女性像です。未だにこのお顔が頭に焼きついています。
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修理したのは女性の頭部左上の3本線が入ったところのピースです。











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割れを隠した鉛桟による修復線が邪魔なので描き直して取り替え、スッキリさせました。








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上が描き直したピース、下が割れて鉛桟に覆われていたピースです。






















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女性の眉毛、まつ毛まで一本一本が線描で細かく表現されており、何とも憂いのあるお顔です。もちろん誘うような色気もあり、絵付け職人の心意気が創造できます。
原画を描いたのがロセッティであれば、モデルはモリスの奥さんジェーンかも知れません。相当な美女だったそうです。

このパネルは青山にお住まいの方がお持ちになりました。現存することを祈っています。
持ち主がお亡くなりになった後、住居を取り壊す際に美術品の価値を理解せずにそのまま重機で産業廃棄物になることがあります。特にステンドグラスは、窓に嵌っているため壁ごと崩壊することが多いようです。
昨年も、今野満利子先生から「今、吉祥寺を歩いていたら私が作ったステンドグラスのある住宅が取り壊されていて、パネルも壊される、すぐ来て頂戴・・・!」との悲鳴の電話がありました。このように寸前で助かることもあります。
多くの美術品が火災などではなく、住宅の取り壊しで消失しているのが日本特有の現象かもしれません。